第277章

白井小鳥は、二人の賭けのことなど知らない。けれど傍から見れば、どう考えても野呂栞が川崎正弘の術中にはまっているようにしか見えなかった。

――とはいえ、どこがおかしいのかと問われると、突っ込みどころがない。

野呂栞は腹の底で舌打ちする。

(やっぱり、ろくなこと考えてない)

「賭けは賭けだ。負けたら従う。真っ正面からやってる。おまえを嵌めたわけじゃない」

川崎正弘は運ばれてきた粥を横目で見て、

「酒をあれだけ飲んだんだ。粥でも入れて胃を落ち着かせろ」

「その粥、何か混ぜてないでしょうね?」

栞は、正弘がそんな親切心で動く男だなんて欠片も信じていない。

「食えないなら捨てろ」

...

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